Society music essay 1 

【音】


 情報というのはやはり重要なもので、何処までレアでリアルな情報を所有出来るかが、その後の結果を生み出す基盤になるものです。

 例えば、もしもプロの音楽家を目指す、などとしたら、音楽雑誌などに溢れる種類の情報と、実際の現場的なニーズ、つまり実践的に求められるものの相違を認識すべきです。アマチュアリズムを大切にして音楽をするのがモチベーションならばそれは素晴らしいし、ある意味<純粋>であり得る、かもしれません、が、、どの世界でもその道の仕事人の世界は、アマチュアリズムとは乖離しているものです。では、一体何がどういう風に乖離しているのか? 、を僕のところではまず学んで欲しい。

 良い音、気持ちのいい音、の基本となるポイントがあります。

 経験的に見ていて、概してプロ志望の人などで、それがうまくいく人はまずそのベースがしっかりと出来上がっており、上手く成就しない人は、その基本を外しているようです。それからバンド活動などをしていて上昇指向の強い懸命なバンドほど、やれ音楽性だの、なんだの、なんてぶつかり合いがメンバー同士で起こったりしがちだと思いますが(笑)、アマチュアの場合、その手の9割方は、問題となっている部分の本質が<音楽性>などでは無くて基礎的な技術力の部分だったりするようです。

 ではそのポイントとなるベーシックな素材とは何か具体的に挙げてみましょう。




point (1)   : rythm,time感覚、広い意味でのgroove感の捉え方】

 ロックやジャズ、ポップスがクラッシック的な要素と決定的に違うのは、音楽空間を構築するのに、ここがまず第一に重要視される点です。groove感があるかどうか、音符のタイム感覚がいいかどうか。

 日本人のプレーヤーが概して楽器演奏に関してつまずいているのはこの点で、楽器の巧さ=リズム、タイム感覚と言っても過言ではありません。その理由でこのあたりのトレーニングは僕のところではまず徹底的にやってもらっています。

 これは一つは民族的素養と昔は言われていましたが、思うに日本全般の音楽教育や、普通の人の音楽練習方法にその欠陥があるようです。バンドスコアやギター譜(tab譜)を買ってきて、必死に練習する時、リズムをまずしっかり認識して読んで無いのですね。ギターの人なら大抵、『えっ〜と何フレットで…』とやっている筈。(思いあたりますかな?)

 音楽空間が立体化出来ないのは、ほとんどの場合、音色やハーモナイズの問題では無く、この点にあります。そして音楽が持つ<説得力>の技術的側面もここにあります。ソウルの籠ったいい感じの音ってあるでしょう? まるで一瞬の音に物語りを聞くかの様な叙情的な音って…。 音楽の物語り性を音で語る時、このrythm=時間軸の捉え方が最も重要な技術力の部分です。『いや〜テクじゃなくてソウルよ!』なんて言う人も音楽ファンには多いと思いますが、そのソウルを音楽で語るのに重要な<テク>とは実はこの部分です。なのでとても重要です。 





point (2)  : 楽器の鳴り=soundの質感】

 楽器の鳴り=サウンドに関しては、単純に楽器自体の質が含まれはしますが、割合としては、ほんの2割、3割くらいです。高い楽器を持てば良い音を得られる、というのはほとんど妄想です(笑)。

 とは言っても結局これはTPOの問題で、ある音楽世界を決定のするのに必要な楽器というのはあります。重要なのは何を使うかというよりは、どう使いきるか、どう鳴らすかです。

 それと音というのは不思議なもので、その人の音って良い意味でも悪い意味で、半ば最初から決定しています。これは極論すると楽器を手にする以前に決定している、という事ですね。僕は単に人を見ていても<その人の纏っている音楽>が聴こえてくる気さえするのですが、楽器を手にしてもやはり不思議とその音になっていますね(笑)。

 では『じゃ、どうしたらいいの?』って事になりますが、アナログ的なものに関しては音以外の世界でもそうですが、きちんとしたものになるのに10年くらいはかかると言われます。これはどんな名プレーヤーでもその轍を踏む様です。それは肉体的な楽器のコントロール法の問題と、音楽性が自分に確立できるまでの時間との両方の問題が絡んでいる様です。

 最近ではヴァーチャルにサンプリングだけで安易に音楽を構築出来ますが、その際でも音色のエディットには細心の気を使うべきだし、下記のハーモナイズに関する構築力も含めて知識が必要です。それから生の音楽空間、感情表現の繊細なコントロールによる気持ち良さと、それらは概してずれている部分もありますね。本当に贅沢な事ってやはり時間がかかりますね…。



 僕はギター弾きなので、ギターに関して言うと、エレクトリックの場合は、よく言われるのは楽器上はピックアップとアンプの質が音の決定要素として高い、という事なのですが、それは大筋事実です…が、それは手先、指先、フォームの問題をクリアーしている上での話しですね。どんな楽器を弾いても、良い意味でも悪い意味でも<その人の音>になってしまいます。

 一つは音に対するイメージの部分と、肉体的な癖の部分。手先だけでは無く、肉体全体の力のかかり方で、手先の状態も変わるので、ボディのかまえ方自体の問題等にもあります。しかし、どういう音の志向性があってもポイントの部分があり、右手、左手ともそのポイントさえ踏襲していれば、どんな風に弾いてもいい訳です。

 しかし、フォームの問題は長く楽器を続けてもやはり、ずっと悩む部分かも知れません。






point(3) : harmonize】


 上の2つが素晴らしく出来ていれば音楽性はもう完成!…と言いたいですが、ある部分はこれは事実だけど、これに加える要素が、メロディーのセンスを含むハーモナイズの部分です。上記2つのポイントが高いレヴェルで出来ているなら、3コードのシンプルな音楽をやっても深い叙情性を演奏出来ます。しかし、今日的な音楽のハーモニー上の装飾はかなり進化していて、極普通のポップスでさえも非常に巧みなアレンジが演出されています。ヘヴィ−なロック系のサウンドの楽曲でさえも、テンションがびしばし入っているのは当たり前で、絶妙な転調などが施されていますね。これは熟練の職人的なプロデュース・ワークが絡んで楽曲が完成しているせいなのですが…。しかし、シンプルだから、凝っているから、端的に良い、悪いの問題でも無いですね。

 それから、ハーモナイズというのは使用する楽器の音色の特性にも依存するので一概に言い切る事が出来ません。例えば、ロック系のサウンドでハーモナイズがシンプルになってしまうのは、ああいう歪んだギターサウンドに含まれる音色の成分(倍音といいます)が、半ばそれを強制しているとも言えるので、これも楽器編成上の、もしくは目指す音楽世界のTPO次第という訳です。

 しかし、アーティストであるならば!、ロックバンドと言えども、バックのストリングスや、ホーンセクションだって自分達の音楽は自分達でアレンジしましょう。僕は実はJ-POP系のロックバンドがあまり好みでは無かったりしますが、例えメンバーが曲を書いていてもサウンド・ディレクションの他者への依存度があまりに大きい場合が多いので、どうも嘘臭さを感じてしまうのですね‥。

 とにかく音楽に関する事全てをアーティストならば、自分で責任を持ちましょう。。

 また、楽器を弾いても、やはりこのハーモナイズはとても大切です。ギターの場合ならばバー・コード(パワー・コード)だけ、とか、ロー・フレットの定型のコードだけ、、でも音楽は一応は出来ますが、巧くてセンスのあるギター・ワークは、ハーモナイズの知識とセンスが効いています。それはイコール、ソロ・ワークにも生かされてきます。ペンタトニックだけでソロはOK!とは言っても、ハーモニーを感じないラインだと、全然OKではありません(笑)。概してバッキング・ワークが素晴らしい人はソロもセンスが良くて巧いですね。








【 総 論  】
 

 以上の3つのポイントの質感で、音楽全体の質自体がほぼ決定してきます。いわゆる楽器の巧い人とはこのポイントの上に成立っていると言っても良いのであって、これを外して近視眼的に技巧的なフレーズや速いパッセージの練習をしても、その練習自体が生きてきません。逆に独修していて、変なフォームで固まってしまってからそれを矯正するのは難しい…なんて事も多いでしょう。

 僕のティーンエイジャーの頃を考えてみても、これは実に反省点なのだけど…(笑)。

 よく有りがちなのは凄く速いパッセージの練習ばかりして、割と出来る様になってギターが巧くなった!っと思いきや、いろいろなバンドやシチュエーションでプレイしてみると、音楽的にも技術的にも全くアンサンブルしない単に浮いてるだけのギターになって、使い物にもならない…などという哀しい現象を巷ではよく見かけます。

 これは音楽のいろいろなタイプを技術的にも、叙情的にも(←これも凄く大切!)深く知っている、という事も関係してきます。

 でも、やはり素晴らしいプレイヤーなら、ある定型のスタイルが普段のものだったとしても、それとは違う音楽状況に入ってもやはり個性をキープしながら良いプレイをするものです。これは上記のポイントを最低限きちんと会得できているという事です。

 僕のところでは、音楽のスタイルや指向性は、それぞれの個性を重んじて指導していますが、この基礎ポイントの部分を徹底しています。音楽の完成度は、音楽性や音楽ジャンルのスタイル以上に、これらに依存しています。その土台の上に、自分の個性や指向性をどんどん発揮して、自分だけのオリジナルな音楽を創っていき、真に充実した音楽表現に繋げていって欲しいと思います。











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